活躍する卒業生④ パティシエール「幸せを運ぶケーキ作り」 岩佐さん。

カリタス女子短期大学仏語科を1993年に卒業された岩佐智奈美さんは、卒業後フランスに留学されました。
フランスでは、語学学校でフランス語を磨く傍ら、本場フランスのお菓子の世界で今の岩佐さんの原点ともなるお菓子に関わるたくさんの貴重な体験をされました。帰国されてからは葉山の「サンルイ島」で修行され、現在はパティシエールとして独立し「Le cochonルコション」を経営、オーダー専門のお菓子製作とお菓子の教室を開いています。お子さんが生まれるまでは、カリタス・プティ・コレージュのお菓子クラスの講師も務めていただきましたし、また、今年度は本学の学生のクラブ「パティスリ・アミュザント」の特別講師として、ご指導いただいています。

1.岩佐さんがパティシエールになろうと思ったきっかけを教えてください。

正直申しまして私は昔からパティシエールを目指していた訳ではなく、ただ幼い頃からお菓子作りが好きなだけでした。もちろん仕事にするつもりもなく、普通に(?!)就職をして趣味がお菓子作り、と言う自分しか想像していませんでした。しかし帰国していざ就職と思った時にまず自分が何がしたいか、何が好きか、何に向いているかを考えてみると行き着く所はずっと好きな気持ちを持ち続けていたお菓子の世界だったのです。
好きな事、やりたい事がこれだけはっきりしているのに他のジャンルで仕事を選ぶのはナンセンスだと思うようになりました。周りにはやりたい事がわからなくて、どのような仕事に就こうか悩んだり、消去法で仕事を決めている友人や先輩が多くいましたし、中にはまずどこかに就職をして、働きながらやりたい事を見つけたり、次の仕事を決めようと思っている人もいたからです。私はそんな友人達の話を聞いて自分はなんて幸せなのだろうかと感じました。大好きな事がお仕事に出来る職業だったからです。いくら好きでも例えば宇宙飛行士や音楽家や画家にはそう誰でも簡単になれる職業ではありませんから。そうして短大時代からずっとアルバイトをしていた葉山のサンルイ島と言うケーキ屋さんで働く事になりました。

2.カリタス短大を経て製菓へという道は一見遠回りのようにも思えますが・・・?

なるほど、そう思われるのか。と言うのがこの質問を見ての私の感想です(笑)上記の理由、流れでお菓子屋さんに勤め始めた私は何一つ不自然に感じる点はありませんし、もちろんただの一度も後悔した事はありません。
ただ好きな事、やりたい事をやり続けてきた結果が今の私なのだと思います。

3.在学当時の岩佐さんはどんな学生でしたか。また学生時代で一番思い出に残っていることは何でしょうか。

勉強は・・・あまりしませんでした。フランス語だけは少しはしましたが。ただとにかく仲間と過ごす時間が楽しかったです。
思い出はあざみ祭で「La belle époque」と言うお店を仏語科(当時)で出店し、イギリスセット=スコーンと紅茶・フランスセット=クレープとコーヒーのような形でカフェスタイルのお店をやった事をよく覚えています。やはりお菓子がらみですね。みんなで一緒に作りました。

4.学生時代にフランス語習得で努力したことなどお聞かせいただけますか。

1年間で名詞・動詞のみですが辞書1冊を覚える機会を与えられました。片道2時間近くかかっていた通学中はいつも辞書を見て覚えていた記憶が鮮明です。1度引いた単語には必ず赤線を引いたりして辞書は常に身近に置いていました。数字が自由自在に言えるようになるために、よく見掛けた車のナンバーを2桁×2つ、或いは4桁で発音したりもしていました。

5.卒業後の留学生活について、お聞かせください。

留学は語学留学でした。ホームスティをしながら語学学校に通う生活を1年弱していました。また、お菓子教室やスクールに参加したり、たくさんの本場のお菓子屋さんを訪れ、見て回ったり、ホームスティだったため、お菓子文化が根付いていると感じる行事などをスティ先で体感することができました。
渡仏前は、帰る頃にはすっかり「フランスかぶれ」になる予定でしたが、実際は全く逆で、初めて海外で生活した私は日に日に愛国心を強めていきました。学校には比較的日本人も多かったのですが意識的に日本人はあまり接触しないように心掛けたせいもあるかもしれませんが、最初の2ヶ月くらいはよく一人になると自分の部屋で泣いていました。
楽しい事もたくさんあったのですが、フランスの良さを受け入れると言うよりいちいち日本と比べて「日本の勝ち」と密かに思う日々でした。比べたり、まして勝ち負けではないのに…。 まだ若かったのかなぁ、もったいなかったなぁ、今だったらもう少し受け入れて楽しめるかなぁと思います。
当時は語学の後に一度帰国してお菓子でまたフランスに!!と考えていましたが、帰国した頃にはかなり参っていたのか、もう留学はいいかな、と考えてしまった私は結局その後一度もフランスの地に足を降ろしていません。ただそうは言っても貴重な経験が出来た事は言うまでもありません。日本に何十年いても出来ない経験をし、様々な国籍の友人が出来た事が私の留学の最大の財産です。

6.パティシエールはあこがれの職業として取り上げられることが多いですが、あこがれだけでは、もちろん務まりませんよね。パティシエールのお仕事をされていて良かったこと、困ったことなどありましたから教えてください。

パティシエールの仕事(今は教える方がメインですが)は確かに素敵な仕事だと思っています。なぜならケーキは人を幸せにするからです。ケーキを選んでいる時のお客さまのお顔は本当に純粋に幸せな様子でやはりケーキは小さくても幸せを運んでくるのだと感じます。
フランスよりずっと洋菓子文化の浅い日本ではケーキは嬉しい事があった時に食べるもの。お祝いする時に食べるもの。幸せな気分になってもらいたくてあげるもの。といった感じでまだまだ特別感のあるものなだけに、なくてもよいものでもあると豊かになるものだと思うのです。そんな幸せを作れる仕事はこの仕事の魅力です。
クリスマスの時期、確かに現場は目の回る忙しさです。ただそんな時に思うのは「今私が仕上げている1台のホールケーキは何人に召しあがってもらえるんだろう?つまり何人の笑顔に囲まれるんだろう?」と言う事です。おおげさに言えば、顔も知らないどなたかを私のケーキで笑顔に出来るかもしれないのです。そう思うと忙しい時期こそワクワクしてきます。

困った事…と言うかどうかわかりませんが、私がこの仕事に就いた頃はまだ女子が敬遠されがちでした。この10年ほどでスウィーツの地位が上がったと言うか市民権を得たと言うか認知度が非常に高まったと感じます。お菓子屋さんではなく、パティシエールの個人名が有名になったり新作が雑誌で取り上げられたりと言うのは以前では有り得なかった現象です。いつの間にか「洋菓子職人」は「パティシエ」「パティシエール」と呼ばれるようになっていました。多くの子供や若い方達がなりたい職業No.1だと言われる事も多く、頼もしい限りです。
が、一方でイメージ上の「パティシエール」に憧れ、実際に仕事をやってみると意外と地味で体力を使う大変な仕事なせいか1~2年で辞めてしまう若い方も少なくないようです。以前のように「何が何でもお菓子が作りたい!!」と強い気持ちで働き始める方は少なくなってしまったように思います。これは困った事と言うより寂しい事かもしれませんね。
単純に困った事は前述の通り、思いのほか力仕事なので慢性的な腱鞘炎や寒い所(溶けてしまうので基本的に暖房はいれません。夏はかなりキツく冷房をかけています。)で立ちっぱなしなので、腰痛とは闘い続けなければならない点でしょうか。

7.最後に学生や受験生にメッセージをお願いします。

もし何にも代えがたい「好きな」事があるならば必ず続けてほしいと思います。と言うより本当に好きならばどんな状況でも惹かれてしまうのですが…。とにかくその気持ちを大切にしてほしいです。好きな事だけやるなどと言うのは無理ですが少しずつでも続けていて下さい。そして小さな目標でもぶれずに持ち続けて下さい。
強く思う事は必ず実現します。それから周囲の人に「こうなりたい!」「○○が好きだ」と言い続ける事も大事だと思います。漠然と思っている思いを口に出す事で考えがまとまりますし、それを聞いていた人が有益な情報を自分に教えてくれると言うラッキーは意外と多いものです。

私は明確にこうなりたい!と思い描いていた訳ではありませんが、どんな時も何かを決めたり選んだりしなければならない状況におかれた時には、私にとっての好きな事・やらなければならない事の優先順位を必ず整理してきました。結局好きな事→好きな事→心地良い事を選択し続けて生きてきたように思います。きっとこれからもそうでしょう。なぜならそうして歩んできた人生はいつを振り返ってみても本当に楽しく、幸せだったからです。
カリタスで知り合った友人達は前向きな生き方をしている子が多く、久しぶりに会っても刺激があって、元気をもらえます。私の異常な程のプラス思考はカリタスで学んだのかもしれません。何事も前向きに楽しくがんばって下さい。

――――――――――――――――――――――――――――

カリタスは人生のファーストステージです。カリタスの学生たちは岩佐さんのように「強く思う事は必ず実現する」と信じ、この2年間を土台にして、2年後、または数年後、自分の希望の道となるセカンドステージ、サードステージへと進んでいきます。岩佐さんはまさに夢が叶い、セカンドステージで留学、サードステージでパティシエールとなったわけですね。ご主人様もパティシエとうかがいました。きっとお仕事の上でも人生においても素敵なパートナーでいらっしゃることでしょう。これからも「パティスリ・アミュザント」の特別講師として、お菓子だけでなく、その生き方を学生に示していただければと思います。どうもありがとうございました。

 

  • 言語文化学科
  •